人気ブログランキング | 話題のタグを見る

陶器神社Ⅰ ~水の神&火の神~

2004年12月に出版された、『大阪力事典』(創元社)という本がある。
大阪ミュージアム文化都市研究会 編、橋爪紳也 監修。

2003年の終わり頃だったと思うが、フリーの編集人である知人から、執筆の話がまわってきて、奈良県民ながら、私も原稿を書かせて頂くことになった。
すでに項目などが決定している段階。企画一覧の中から、書けそうなもの・書きたいものを選ぶようにとのこと。「神社関係なら…」と思い、リストを見てみると、有名な寺社ばかり。
そのなかで、唯一、初めて見る名前の項目があった。同じ敷地内にあるのだろうか、その項目だけ、二社一組になっている。

とても、気になった。

サブタイトルならいざ知らず、境内摂社や末社、または合祀された神社が、タイトルとして同等の扱いを受けるということは、なかなか珍しいのではないだろうか。普通だったら、どちらかがメインの座を占めるに違いない。合祀のために移転された神々というのは、引っ越し先では、たいがい、形ばかりの小さな祠を準備されることが多い。

神社そのものというよりも、その二社の神様同士の関係が、気になる。

人間と同じで、神様も引越を余儀なくされることが多い。たいがい、人間サイドの都合によることがほとんどだが、人間と同じように、神様も、昔いた場所を懐かしく思われたりもしているようだ。きっと、この二社の神様達も、引越を重ねてきて、今、共に寝食(?)を共にしているに違いない。原稿1本のなかで、神社2つ分を関係づけて書くというのは、書き甲斐もある。これが、神様達の慰めにでもなるのならば!

坐摩神社と陶器神社。

この二社をめぐって、宮司さん達から話をお伺いしたり、資料を頂いたりしながら、二社の変遷をたどって市内を歩いた。やはり、驚くべき神様達の関係が判明した。

数奇な運命の下、背中合わせに建つ、水の神と火の神だった。

水の神がもともと座していた石町の跡地には、イワクラもある。この関係性のおもしろい話は、是非、『大阪力事典』でご覧ください(長くなってしまうので…、すいません)。
神様の舟に乗ったような、とても不思議なご縁に恵まれた、楽しい取材でした。

ところで、こちらの火の神を祀っているのは、神様の目の前にならぶ「せともの町筋」の陶器店の方々。昔は150軒ほどあった陶器店も、今は5店ほど。実は、そのうちの老舗「つぼ善」店主の御崎さんという方が、『大阪力事典』の陶器神社の記事を見てくださり、私に会ってみたい、とのご要望を編集部に寄せてくださった。

なんと、「つぼ善」さんの蔵には、今はどこにもないような、江戸時代から戦前ぐらいまでの、極めて貴重な資料が大量に眠っているらしいのだ。
そのお宝が、火ならぬ、日の目を見るときが来たのだろう。
電話で話した編集人の知人によると、それだけで本が一冊はできそうなほどの話らしく、一度、大阪歴史博物館の学芸員の方と一緒にお伺いしてみよう、という話になった。…が、結局、風邪を引いてしまったため、その日、私は同行できず。
その時の様子は、話だけでも、ものすごいボリュームで、歴史博物館で企画が組めるほどの内容だったらしい。しかも、多岐にわたる内容で、何年かがかりで取り組まないといけないかもしれない、とのこと。

そして本年、1月11日。いよいよ、蔵の扉が開く…。
11日は、おりしも、鏡開き、蔵開きの日。楽しみですねー。白い煙がモクモク…、なんちゃって(玉手箱のイメージになってきている)。

今度こそ、私も参ります(おもしろがっている:仕事と思っていない)!

      ※『大阪力事典』の原稿のシメの部分だけ、引用※

水と火はエネルギッシュで恵み深い存在であると同時に、一歩まちがうと災害を引き起こす危険な存在でもある。しかし、今一番大切な要素としては、両者が共に、浄化と再生のシンボルであるということだろう。
 バランスをとるかのように背中合わせにして建つ2つの神社。水加減、火加減をとりながら、新たな時代を渡っていきたい…、そんな大阪の希望を象徴しているように思えてならない。
by rupa-ajia | 2006-01-09 22:15 | ライターの仕事
<< 陶器神社Ⅱ ~人混みの中、一人... ありがとう >>