『naranto(奈良人)』という奈良の季刊誌があります。
そこで連載コラムを担当させて頂いているのですが、実は、他にも民俗学的な原稿も書かせて頂いています。「民俗学的」と言っても、編集部から提示されたテーマを、自分で民俗学的に展開させているだけなのですが。 貴重な紙を使った雑誌をわざわざ購入して頂いている以上、その誌面でしか読めない内容にしないと、自然にも読者にも申し訳ない…。常々、そんな思いで執筆させて頂いております。ネットで流布している言説をコピー&ペーストしたかのような「リライト原稿」だけは、できる限り避けたいのです。 私は人生のほとんどを奈良県民として生きてきましたので、奈良の専門誌とも言える『naranto』には、他誌よりもねばり強い態度で書かせて頂いています。表だって民俗学的に仕上げることはしていませんが、与えられたお題に、目立たぬようにそのエッセンスを盛り込むようにしています。地域情報誌の特集企画ならではのカラーを出すためにも。 「民俗学」という言葉を使うと難しく聞こえてしまうかもしれません。要は、「その土地で長らく続けられてきた自然と人との真摯な関係性、そして、その心」を、盛り込むように心がけているということです。事実の提示だけに留まらず、その由縁や意味、つまり心をお伝えしたい。 しっかりと奈良の大地に根を張るような、そんな記事ですね。 今、発売中の『naranto秋号』では、コラムの他、「大台ヶ原」についての原稿を書かせて頂きました。原稿内容はともかく、何よりも写真が素晴らしいので、多くの皆様に、ご覧頂きたいと思っています。1泊2日の取材では、初日の朝まで台風が大荒れ。大台ヶ原方面は通行止めでしたが、私達が進むにつれ、通行止め解除。直前までの大雨のお陰で、実に瑞々しい大台ヶ原を撮影することができました。カメラマンの澤地さん、素晴らしい! 特集最初の見開きは、「地の龍と天の龍が対面している」壮大な写真。この撮影地点、ダイジャグラに到着した途端、急に太陽が顔を出し、視界が急に広がりました。そして、ダイジャグラでの撮影が終了した途端、再び曇天に戻りました。 ここは、聖地なのです。 ところで今回も、「大台ヶ原」というお題だけ頂き、内容はこちらで構成させて頂きました。良いか悪いかは抜きにして、とにかく、今までどの紙媒体にも取り上げられてこなかった大台ヶ原の顔を、ご紹介することができたのではないかと思っています。 取材から帰った翌日。一日中、家で泣いておりました。 刻々と退縮している大台ヶ原の自然。その現実と対峙して、ただただ、無性に涙が出てくるのです。身体は柳生にあっても、心はいよいよ森の最奥に入っていったのですね。 涙を出し切った後、改めて意識を大台ヶ原に集中させました。 深い森の波動を感じながら、その声に耳を傾けてみました。 それは、とても静かな世界。 私が「民俗学的ファンタジー」と称してきたものの最奥にあるもの。 何があっても揺るぎない、大いなる力。人智を離れた、その精妙な感覚を表現したい。 …その結果が、今回の拙い原稿です。(他誌と締め切りが重なり、連日の徹夜でしたが…) もし宜しければ、是非、お目通し頂けると幸いです。 数々の素晴らしい写真から放散される原初の氣を、存分に感じて頂きたいと思っています。 森の声が聞こえるとき 私の声が聞こえる 森の最奥に木霊する産声 密やかな 私の声
by rupa-ajia
| 2007-09-20 18:27
| ライターの仕事
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■ライター 近藤夏織子
(こんどう・なおこ) 医学書出版社の編集部に在籍後、フリー。10数年前より民俗学の分野を中心に、古老への聞き取りを進め、独自の視点で記録執筆を行う。ほか、伝統、食農、田舎暮らし、神話、アート、紀行、建築、科学、医学、…、etc. 中世・ルネサンス音楽のレッスンも承ります(リコーダーアンサンブル)。 http://amanakuni.net/rupa/index.html 各種お問い合わせは、直接ご連絡を ■連載記事・掲載誌の一部 ミニコミ誌『なまえのない新聞』 名前のある家 2000年~ 不定期掲載 『チルチンびと広場』web版 連載コラム担当 「7代先につなげたい、 先人の心」 http://www.chilchinbito-hiroba.jp/column/senjin/ 『チルチンびと』 民俗学分野の原稿を企画執筆 『田舎暮らしの本』 など 以前の記事
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